やっと読みました

芙蓉千里

芙蓉千里

コバルト文庫作品はそれこそデビュー当時から読んでる作家さんなんですが、一般書は今回初めて読みました。
(以下ちょっとネタバレ含みます)
女郎を目指して自ら人買いについて大陸に渡った辻芸人の娘、フミを主人公に据えた歴史もの。
最初は女郎を目指していたけれど(世間知らずとかではなくちゃんと理由はある)、
舞の才能を買われ、芸妓の道を進むフミも良いんですが、
どちらかと言うと、フミと一緒に人買いに買われ、友人となるタエの方に惹かれた。
特に、自分を身請けしようとしている男達への感情をむき出しにする場面が秀逸でした。
2人が身を置くことになる店、「酔芙蓉」の女郎達も良かったです。
「地獄」と呼ぶにふさわしい世界で、他人を蹴落とし、嫉妬と野心にまみれ、体を壊したり、恋に破れて阿片に溺れたりしても、
彼女達をただ惨めなだけとは思えなかったし、何より嫌いにはなれなかった。
男性陣はというと、フミが心を寄せる謎めいた青年、山村は、
出会った当時12歳だったフミが惚れるのも無理はないけど、どうにも胡散臭すぎるし、
後半登場する黒谷も魅力的ではあるものの、女性陣ほどのインパクトはないというか。
詳しくは書きませんが、恋愛面は期待し過ぎない方がいいかもです。それ至上の話ではないので。
思えば流血女神伝も、女性陣は皆、美しかったり賢かったり、かつ強くてしたたかでたくましかったのに、
男どもときたら発展途上の少年はともかく、他は粗野で乱暴だったり、
美形はことごとく影薄かったりイマイチ決まらなかったりどんどんダメ人間化していったり、
そこそこいい役どころがきっぱりはっきり非イケメンだったり、コバルトにあるまじき有様だったな…
(否定してるのではなくむしろ拍手を送りたい気持ちです、だからこそ良いんじゃないか彼らは!)
そんな流血女神伝まだ最終巻だけ読んでないんですが(え)
女郎の話といっても、直接的な行為のシーンはほとんどないです。後始末関連がちょっと生々しいかな?というくらい。
元は携帯で配信されていたものを加筆・修正したとのことなので、若干腑に落ちない点
(タエの急激な変貌ぶりとか、よく「芙蓉」を名乗るのを許されたな、とか)は、
その時に削られてしまったんだろうか。


400ページ弱とそこそこボリュームがあり、ときどき表現がまだるっこしいと思ったり、
進みが遅い箇所もあったけど、それでも最後まで、ページを繰るのがとても楽しみだった。
華やかな面だけでなく、マイナスの感情を隠すことなくさらけ出しながらも、
強くたくましく生きていく少女&女性達の物語の読後はむしろ爽快でした。
携帯配信で続編もあるみたいですね。
これだけで完結しちゃっていい気もするんですが、せっかくなのでそちらも読んでみよう。