ああそうさ、ドツボ要素だらけさ

半化粧の恋 (ガッシュ文庫)

半化粧の恋 (ガッシュ文庫)

1ヶ月半程前、某ショップのメルマガを読んでたら「あとがきのイラストがとても素敵で云々」とあり
タイトルしか書かれていなかったので、誰の作品かなとリンクをたどりましたら。

大正十二年、初夏。待ち続けた男が戻ってくる。侠客・佐賀屋の博徒、日垣景の思いは複雑だった。美貌ながら、半身を紅い火傷の痕に覆われた彼の通り名は「半化粧の景」。景の、美しく白かった肌と運命とを変えたのは、奉公していた堂島邸の火事だった。その堂島家の長男であり放火犯として服役していた充洋の出所。秘かに慕い続けていたかつての主は、景の弟分として任侠の道に入ることを望んだ。主従の反転が、景の想いを蝕む。紅く爛れた半身が、今また恋に灼かれていく―。



お買い上げ決定。


嗚呼、身内の失笑が聴こえる…


あらすじの通り、名家の元坊ちゃん(18→30)×博徒になった元使用人(15→27)の時代モノです。
表紙の絵柄などからも察せされるように、任侠といっても侠気あふれるというより健気寄りの受さんですが
そっちの道に入ってからは結構さばさばした面も見せてるし、かつての主だった攻に対してもタメ口だったりするので、
大人しい印象はないです。本文イラストは表紙&口絵ほど幼くないし。
以下少々ネタバレ含みつつ。


景にとって、自分に希望を与えてくれた充洋は「大切な人。穢すなんてとんでもない」という位置づけなので
前半の少年時代は恋愛感情を匂わせる描写もなくはないんだけど
許婚のお嬢さんといっしょにいるところを見ていても、それに胸の痛みを覚えることもなく
むしろ側にお仕えして2人が築く新しい家庭を見守りたい、と純粋に夢見てたりするくらいだったりします。
後半、憧れや尊敬以上のものを抱いていることに気付き始めても、終盤までその感情の正体からは目を背け続けてるし。
奉公先の屋敷では主人(充洋の父)の慰み者にされ、主人の死により開放されて後も
道を踏み外してしまった大切な人のために複数の男に身をまかせ、見返りに金を得ているという境遇ですが
当人が「金だけじゃなく、快楽ももらえるなら楽」と、開き直っちゃってることもあり
「ほらこの受、かわいそうでしょう健気でしょう」的な湿っぽさはあまり感じませんでした。
しかし充洋も、軍人になって欲しいという親の反対押し切って医者への道を進んでたというのに
「知識を得てお前が変わっていくのを見ていて、素晴らしいと思ったから」教師になりたいと言い出し
その矢先に放火事件、出所したら今度は「あんたの側にいたい」と、博徒に。
そして景が体を売っているのを知り、相手と思しき男の元に怒鳴り込むこと2回…情熱的というか、坊ちゃんの割に極端だよなぁ…。


前半と後半では受攻ともに境遇も性格も、うわー変わっちゃったのね…ってくらい変わってしまうんですが、
根っこのところはそのまんまな気もするし、契機となった事件でかたや10年の刑務所暮らし、
かたや半身に大火傷を負ってヤクザ者へ、ということになればそれも致し方ないかなと納得。
ただ、最後の最後、無事想いが通じ合ったところできゅんきゅんしてたら
すぐ後日談的に地の文のみでその後の経緯が語られ、ラストシーンも景と近所の子どもたちしか登場せずに、
2人の関係がどんな風になったのか(呼称はどうしてたのか、とか)、具体的な描写がなかったのは残念。
とは言え、危惧していた程うじうじしたお話ではなく、かといってあっさり過ぎることもなく、程よく読み応えがありました。
この作品を知るキッカケだったあとがきのイラストも、色っぽくて本当に素敵♪


(簡易検索用)作者名:鳩村衣杏